バークリー卒業生で、ボストン在住の音楽家Yuki Kanesakaさんへのロング

インタビュー。今回は、いよいよバークリーを卒業してからのYukiさんの

音楽人生について、伺いました。

Part5「AM to AM〜バークリーを卒業してから〜」

Q:では、バークリーに来る以前と、バークリー生だった頃のことをお聴きしたので、

今度は、バークリーを卒業してからのライフスタイルのことを聴いてもいいですか?

A:全然変わってない。学校がなくなっただけかな。

Q:学校がなくなって、今はどんな生活のサイクルなんですか?

A:大体朝7時から9時の間に作業初めて、夜の1時くらいまで作業するね。

AM to AMだね。

Q:へぇーーー・・。好きですね・・。

A:好きだね。(笑)超好き。

今こうやって話してる間も、またこれ終わったら作業戻れるとか、あそこどうしよう

かなとか、そういうことばっかり考えてる。

Q:卒業したばかりの頃はどんなことをしていましたか?

A:初めの頃は、ギグをたくさんしていて、さっき言ったような(Part1参照)いろんな

ツアーに出て、レコーディングをしたり、要はプレイヤーとしてやっていた。

だけどやっぱり、何かのツアーに出たときに、時間がもったいなく感じたんだよね。

何でもそうなんだけど、移動の時間がもったいなく思えちゃうのね。これだけ移動して

1日1セットしか弾けないみたいな。

Q:う〜ん。

A:これだけの時間をロスして、これだけの収入でやっていかなきゃいけないとなると、

その移動時間で、音楽を作っていたいのに、その時間をとられている俺は損だ!と

思ったんだよね。それよりかは、金になろうがなるまいが、自分の音楽をずっと

作れてる方が、得な生き方だと思ったんだよね。それをツアーの2日目くらいに思って、

それから2週間弱のツアーが終わるまではずっとジレンマだった。

Q:それはバークリー卒業したての頃?

A:それも覚えてないくらい、ツアーばっかりやってた時期があって。

キャリアが必要だと思ったから、コンペもやってたしね。2003、4年の頃に、

「The Source」っていう雑誌のNational Rap Music Competitionで一回優勝してて。

ギブソン・ジャズギター・コンテストでも優勝して。

Q:すごい・・!!

A:プロダクションワークを本格的に始めたのは、バークリー在学中の21歳のときで、

そのコンペで優勝したのをきっかけにコンピレーションアルバムが出ることになって、

Wu-Tang Clanていうラップチームが参加するアルバムに僕も参加させてもらって。

そこから、Hip HopとかR&BとかSoulのプロダクションワークにちょっとずつ

自分でも入っていった感じかな。

でもそれと同時進行で、日本の依頼もとるようになって、デモも作っていろんな

ところに送って、会ったらすぐ音楽作ってCDに焼いて、みんなに渡して、

みたいなことをもう何年もずっとやってて。

Q:それは日本の会社とってことですか?

A:日本の会社もだし、レーベルだとドイツとカナダと、ギリシャとブラジルと、

イギリスと日本とアメリカを手がけたことがある。バークリーにいるといろんな国の

ミュージシャンが来るから、いろいろやってたらその国でいろいろ出来るように

なったり。今はインターネットで自分のことプロモートできるから。

ある日突然、君に楽曲作ってほしいってドイツのレーベルから依頼が来てること

だって、全然ない訳じゃなくて。

Q:なるほど。じゃあ今は朝起きて、朝の1時まで、ずーーーっとスタジオで

仕事をしているんですか?

A:仕事と思ってないけどね、全然。

Q:ずっと音楽してる??

A:うん。必ず一日のどこかに音楽を聴いて楽しむ時間を作ってる。

Q:自分のじゃなくて他の人のですか?

A:そう。インプットが枯渇したら決して音楽作れないと思うから、

そのインプットは結構潤滑させてる。

Q:何時間くらい?

A:長いときで3時間くらいかなぁ。短いときで10分とか5分とか。

でも絶対時間は作る。

Q:聴いてアナライズしてるんですか?

A:ううん。アンテナに引っ掛けとくだけで、後で絶対出るから。アナライズって

いうか、もう聴いたら分かるくらいじゃないとだめだけど、大体好きな曲って

何がどこで出て来るか覚えてるでしょ?

Q:・・・はい(多分)。

A:僕もいつも好きなCDとかレコードとかかけて、それはドラムビートだけのもあるし、

クラシックもあるし、アフリカンビート、ジャズ、スウィング、ラップ、

Steve Reichみたいなミニマル、テクノ、Massive Attack、Joao Donatoみたいな

Bossa Novaもあれば、Antonio Carlos Jobimみたいなのもあれば、Tania Mariaの

サンバみたいなのもあれば、もういろんな音楽ジャンルを聴いて、それでいいなと

思うところをちゃんとどっかでメモってあって。

そうしないと、これだけ毎日曲作ってて、発想が出なくなっちゃうと良くないから。

Q:今手がけてる曲は、もうクライアントのコンセプトがあって、それに沿って

作っているのですよね?

A:自分の曲以外はそう。曲が出来上がっていればもうアレンジだけのときも

あるしね。

あと、自分が持っているアレンジのスタイルを発表して、それが通ったら、

もうビジョンが出来上がってるからそれに向けて作るだけだよね。

(「朝から晩まで」ではなく、「朝から朝まで」。本当に脱帽です。

次回はいよいよ最終回、「Yuki Kanesakaの現在」です!)