世界中どこからでも受けられるバークリーのオンラインコースで、

ミュージック・ビジネスを教えているマイク・キングさんにインタビューその2!

今回は音楽業界を変えたインターネットについてのお話です。

(筆) マイクさんは、バークリーのオンラインコースでミュージック・マーケティングを

教えていらっしゃいますが、やはり、この数年間での音楽業界の最大の変化というのは、

インターネットですか?

(マイク)− その通りです。間違いなく、インターネットが全てを変えてしまったと

言っても過言ではありません。まず、インターネットはレコード会社のあり方を

変えてしまいました。

昔は、レコード会社は、「リプレースメント・サイクル」という循環作用で動いて

いました。レコード会社は、レコード、カセット、CDといった風に、数年間の

サイクルで、常に新しい音楽の聞き方を提案していたのです。そうすることで、

そのサイクルに従って、リスナーが、同じ音楽を買い替えなければならないように

していたのです。

しかし、インターネットの出現によって、「リプレースメント・サイクル」はもう

通用しなくなってしまいました。MP3よりも便利なものはもうないからです。

インターネットは、レコード会社のビジネスを動かなくさせてしまいました。

ファイル・シェアリングについても同様のことが言えます。

(筆) リスナーがCDをもう買わなくなったということですか?

(マ)− ファイル・シェアリングの台頭で、CDの売り上げは年々落ちています。

でも私は、他にも原因があると思っています。それは、リスナーが音楽を不法に

ダウンロードしたと言って、レコード会社やRIAA(全米レコード協会)がリスナーを

訴えるようになってしまったことです。これはとてもネガティブなイメージを、

リスナーに与えてしまいます。「このメジャーレーベルは、リスナーを訴えたりして

悪い会社だから、もうここのCDは買わない」という風に思われて、ますますCDの

売り上げが落ちて行きます。

もう1つの原因は、CDの値段が高すぎることです。無料で同じものが手に入るなら、

当然誰でも無料の方を選ぶでしょう。でも、もしレコード会社とアーティストが協力して、

ファイル・シェアリングよりももっと便利なものを作ったらどうでしょう。

もし、月に5ドルはらって、iphoneで全ての曲が聴けるようになったら、みんなそれに

飛びつくかもしれません。もし、音楽産業とアーティストが協力すれば、音楽の未来には

いろいろな可能性があると思います。

(筆) インターネットの問題は、もう語り尽くせませんね・・。

インターネットを賢く利用して、ミュージシャンとして成功するために、

重要なことはどんなことですか? ミュージシャンとしての自分とビジネスパーソン

としての自分を両立させることがとても難しいと、常々感じているのですが・・。

(マ)− 初めに僕が思うことは、ミュージシャンは、常に、自分を売り込むために

努力していかなければならないということです。これは、現代だけではなく、

ビートルズの頃に戻っても同じことです。彼らは常にセルフ・プロモーションを

行ってきました。例えば、彼らは「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」や

「ヘルプ!4人はアイドル」「マジカル・ミステリー・ツアー」など映画を制作しました。

現代ではもっとたくさんの手段があるとはいえ、こういった昔からの手段も、

今でも十分に通用します。

(筆) 彼らは映画を自主制作したんですか!? 知りませんでした!

(マ)− 彼らだけで全て行ったのではないにしろ、ビートルズはいつも自分たちが

関わって何かを作っていました。エルビス・プレスリーもそうです。

彼らが作った映画は全て、彼らの音楽を売り込むために作られたのです。ビートルズは、

その時代に自分たちが持っていたツールを最大限に使って、常にセルフ・プロモーション

のために働いていました。それは、今の時代のミュージシャンにもぴったり当てはまる

ことだと思います。

「僕はミュージシャンだから、ミュージックビジネスには関わりたくない」と言って

座っているだけの人は成功しないと思います。

僕が提案したいのは、まず、音楽を書くことや、演奏することが好きならとにかくそれに

打ち込むこと。その上で、必要最低限のビジネス、マーケティング、セルフプロモーション

の仕方を学ぶこと。そうすれば、そこから更に「好き」なことが見えてくるはずです。

ブログを更新するとか、ツアーを組むとか、「好き」だと思うことをする。

「好きじゃない」と思うことに対しては、それを手伝ってくれる誰かを見つける、

つまりチームを組むことです。

ホームページを作成するのが苦手とか、グッズを作るのが苦手なら、それを得意とする

人を見つけること。あなたのスキルと、誰かのスキルをトレードするのです。

質問の答えに戻りますが、オンライン・マーケティングでまずミュージシャンが

やらなければいけないこと、それは自分自身のホームページを作ることです。

(筆) 私まだ作っていません・・!

(マ)− それなら今すぐ作ることです!

現在は、簡単に自分のホームページを作れる会社がいくつもあります。それを

利用して作りましょう。自分自身のページでなくてはなりません。なぜなら、

myspaceやfacebookなどのページより、はるかに自分の色が出せるし、ファンからの

情報も得られやすいし、メーリングリストの作成など、自分自身のツールも増やせます。

自分のホームページを作成したら、マーケティングの始まりです。メールアドレスを

集めて、facebook、myspaceでコミュニティを増やし、情報を広められる環境を作ります。

ライブツアーをするとき、お客さんのメールアドレスを教えてもらうことは非常に大事です。

だからまず、ホームページを作成すること、あなたを助けてくれるチームを作ること、

そしてソーシャルネットワークを広げること。

4番目は、オンライン上での仕事ではないのですが、非常に重要なことがあります。

それは、ライブツアーです。当然のことに思えますが、オンラインより何より、ライブを

することがファンを獲得する最大の方法です。

これらが、成功するためのトップ4だと思います。

他に付け加えるとすれば、ホームページを作成したら、検索エンジンに引っかかりやすい

ようにすることが大事です。

そして最後に、ホームページから直接あなたの音楽を買えるようにしたり、

多くの選択肢を提供すること。CDを買いたい人もいれば、mp3ファイルだけ欲しい人も

いる、両方とも欲しい人もいるかもしれない、両方買って、更にセーターとTシャツが

欲しい人もいるかもしれない。前にお話したTopspinでは、オンラインでの販売もできる

ようになります。私もTopspinを使って、オンラインで自分の本を売っています。

(筆) アーティストのグッズを売ることって、そんなに大事なのですか?

どうして大事なのですか?

(マ)− それはとても良い質問です!

CDの売り上げは、1999年以降どんどん落ちています。昔は、レコード会社は

CDの売り上げだけを気にすればよかったのですが、それではやっていけなくなって

しまったので、収入の内訳を多様化させなくてはいけなくなったわけです。

CDだけではなく、人々が買ってくれる商品を作らなければならない。アーティストグッズは、

コピーのできない、良い商品なのです。そして、ライブでも売れる、ホームページ上

でも売れる、オリジナリティーも出せるのでファンも嬉しくなる。なので、アーティスト

グッズは、とても良い収入源になります。CDを買わなくなった代わりに、グッズを買う人は

増えています。そして、もう1つ大事なことは、例えば、Tシャツにあなたの名前のロゴや

バンドの名前が書いてあったら、それ自体が街を歩く宣伝材料になるということです。

(筆) 確かにそれは重要なことですね!

(To be continued, その3に続きます)

お話を伺ったマイク・キングさん

HPはこちら! → Www.musicmarketingbook.com

www.berkleemusic.com